整骨院・接骨院の広告について調べていて、以下のいずれかに当てはまる方:
「検索すると医療広告ガイドラインの解説ばかり出てくる」「クリニックの事例を参考にしていいのか分からない」「制作会社が医療広告GLを基準に提案してきた」
この2つはまったく別の法令に基づく、別のガイドラインです。しかし名前が似ているため混同され、医科の基準で作った広告が柔整では違反になるという事故が頻発しています。
本記事では、2つのガイドラインの決定的な違い、なぜ柔整の方が厳しいのか、混同しやすい5つの論点、正しい情報源の見分け方までを解説します。
1. 2つのガイドラインは別物である

まず前提を明確にします。名前は似ていますが、根拠法も所管も対象も異なります。
1-1. 基本情報の比較
| 項目 | 医療広告ガイドライン | あはき・柔整広告ガイドライン |
|---|---|---|
| 正式名称 | 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 | あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復の施術に係る広告に関するガイドライン |
| 根拠法 | 医療法 第6条の5 | 柔道整復師法 第24条 / あはき法 第7条 |
| 対象 | 病院・診療所・歯科医院 | 整骨院・接骨院・鍼灸院・マッサージ院 |
| 施行 | 2018年6月(その後改正) | 2025年2月18日公布 |
1-2. なぜ混同されるのか
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 名称が似ている | どちらも「広告ガイドライン」と略される |
| 情報量の差 | 医療広告GLの解説記事は圧倒的に多い |
| 検索結果の偏り | 「広告ガイドライン」で調べると医科の情報が上位に来る |
| 制作会社の知識 | 医科の案件経験から、そのまま適用してしまう |
医療広告ガイドラインには「広告可能事項の限定解除」という仕組みがあり、条件を満たせば通常は広告できない内容も掲載できます。
この感覚で柔整の広告を作ると、ビフォーアフター写真・体験談・治療内容の詳細など、柔整では明確に禁止されている表現が入り込みます。
2. 決定的な違い|限定解除の有無

2つのガイドラインの最も大きな違いは、ここに集約されます。
2-1. 医科には「逃げ道」がある
| ガイドライン | 広告の考え方 |
|---|---|
| 医療広告GL | 原則として広告可能事項を限定 + 一定要件で限定解除が可能 |
| 柔整GL | 広告可能事項の限定列挙のみ。解除の制度がない |
2-2. 限定解除の要件(医科の場合)
| # | 要件 |
|---|---|
| 1 | 医療を受ける者が自ら求めて入手する情報を表示するものであること |
| 2 | 表示される情報について、問い合わせ先を記載していること |
| 3 | 自由診療の場合、通常必要とされる治療内容・費用等を記載していること |
| 4 | 自由診療の場合、主なリスク・副作用等を記載していること |
美容クリニックがビフォーアフター写真を掲載できるのは、この限定解除に加えて治療内容・費用・リスクを併記しているためです。
柔道整復師法にもあはき法にも、医療法第6条の5第3項に相当する規定がありません。
つまり「条件を満たせば載せられる」という道が、制度として用意されていません。第24条の限定列挙を超える内容は、どのような注記を添えても掲載できません。
2-3. この違いが生む結果
| 表現 | 医科 | 柔整 |
|---|---|---|
| ビフォーアフター写真 | 条件付きで可 | 不可 |
| 患者の体験談 | 不可(限定解除でも不可) | 不可 |
| 治療内容の詳細説明 | 条件付きで可 | 不可(施術方法の広告) |
| 専門医資格の表示 | 厚労大臣が定める団体のものは可 | 不可(該当制度なし) |
| 症例数・実績 | 条件付きで可 | 不可(比較優良広告) |
誤解されやすい点ですが、患者の体験談は医療広告ガイドラインでも禁止されています。限定解除の対象外です。
つまり体験談については、医科も柔整も同じく使えません。他の項目は柔整の方が厳しくなっています。
ビフォーアフター写真の詳細は、整骨院でビフォーアフター写真は使えるのかで解説しています。
医科の事例を参考にしていませんか?
制作会社が医療広告GLを基準に作ると、柔整では違反になる表現が入り込みます。
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3. なぜ柔整の方が厳しいのか

「医師の方が権限が大きいのに、なぜ広告は柔整の方が厳しいのか」——理由は3つあります。
3-1. 業務範囲の性質が違う
| 項目 | 医科 | 柔整 |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 医行為全般(広範) | 骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の5傷病(限定) |
| 診断 | できる | できない |
| 広告の性質 | できることが多いため、正確に伝える必要がある | できることが限られるため、超えないよう制限する |
医科は「幅広くできるから、正確に伝えるための仕組みが必要」。柔整は「範囲が限られているから、超えないよう制限する」。設計思想が逆です。
3-2. 誤認のリスクが大きい
利用者から見ると、白衣・ベッド・電気機器がある施術所は医療機関と区別がつきにくい面があります。
「治療」「診断」といった医療用語を使えば、その誤認はさらに強まります。これを防ぐため、柔整では医療機関を連想させる表現が広く制限されています。
3-3. 療養費制度との関係
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 不適正請求への懸念 | 広告で業務範囲外の施術を訴求すると、対象外の施術を療養費請求する誘因になる |
| 制度の信頼性 | 療養費は公的な財源。適正な運用が求められる |
「肩こりも診ます」と広告すること自体が、療養費の不適正請求につながりうる——この構造も、規制が厳しい理由のひとつです。
4. 混同しやすい5つの論点

実務で判断を誤りやすい箇所を、具体的に整理します。
論点1: 自院ウェブサイトの扱い
| ガイドライン | 扱い |
|---|---|
| 医療広告GL | 2018年改正でウェブサイトも広告の対象に |
| 柔整GL | 原則として広告に該当せず。ただし例外多数 |
ここは柔整の方が緩く見えます。ただし例外(リスティング広告のリンク先、SNSからの誘導先など)が多く、実務上はほぼ広告扱いになります。
論点2: 診療科・専門性の表示
| ガイドライン | 扱い |
|---|---|
| 医療広告GL | 標榜科の制度あり。「整形外科」等を掲げられる |
| 柔整GL | 該当制度なし。「○○専門」は使えない |
論点3: 資格・肩書きの表示
| ガイドライン | 扱い |
|---|---|
| 医療広告GL | 厚労大臣が定める団体の専門医資格は広告可 |
| 柔整GL | 「柔道整復師」と氏名のみ。認定資格は不可 |
論点4: 費用の表示
| ガイドライン | 扱い |
|---|---|
| 医療広告GL | 自由診療は費用・リスクの明示が限定解除の要件 |
| 柔整GL | 自費料金の院内掲示が求められる。表記方法にも制限 |
論点5: 用語の使用
| 用語 | 医科 | 柔整 |
|---|---|---|
| 治療 | 使える | 使えない |
| 診断・診察 | 使える | 使えない |
| 患者 | 使える | 使えるが「利用者」が無難 |
| 症例 | 使える | 使えない |
「治療」の扱いは、整骨院で「治療」という言葉は使えるのかで詳しく解説しています。
5. 自分に適用されるのはどちらか

判断は簡単です。開設届を出している業態で決まります。
| 業態 | 適用されるガイドライン |
|---|---|
| 整骨院・接骨院 | あはき・柔整広告ガイドライン |
| 鍼灸院・マッサージ院 | あはき・柔整広告ガイドライン |
| 病院・診療所・歯科医院 | 医療広告ガイドライン |
| 整体院・カイロ | どちらも直接適用されない(景表法・医師法は適用) |
5-1. 併設している場合
| 状況 | 扱い |
|---|---|
| 整形外科と接骨院を併設 | それぞれの広告にそれぞれのGLが適用される |
| 接骨院と鍼灸院を併設 | どちらもあはき・柔整GL。業務ごとに区分して表示 |
| 接骨院と整体サロンを併設 | 接骨院部分は柔整GL。整体部分も誤認防止のため区分が必要 |
同じ建物・同じウェブサイトで複数業態を扱う場合、どの部分がどの業態のものかを明確に区分してください。
混在させると、柔整の広告に整体の訴求が紛れ込み、規制違反になります。ページを分ける、見出しで区切るなどの対応が必要です。
4業態の違いは、接骨院・整骨院・整体院・カイロの違いを一枚で理解するで解説しています。
6. 医科の情報を参考にしてよい範囲

医療広告ガイドラインの解説は情報量が豊富です。まったく参考にならないわけではありません。
6-1. 参考にしてよいもの
| 項目 | 理由 |
|---|---|
| 虚偽広告の考え方 | 事実と異なる表示が禁止される点は共通 |
| 誇大広告の考え方 | 著しく人を誤認させる表示という定義は近い |
| 比較優良広告の考え方 | 「No.1」等が禁止される点は共通 |
| 体験談が禁止される理由 | どちらも禁止。理由の説明は共通して理解できる |
| 打消し表示の考え方 | 注記が小さければ効果を認めない、という判断枠組み |
6-2. 参考にしてはいけないもの
| 項目 | 理由 |
|---|---|
| 限定解除に関する記述 | 柔整には制度がない |
| ビフォーアフター写真の掲載条件 | 柔整では条件を満たしても不可 |
| 専門医資格の表示 | 柔整には該当制度がない |
| 症例数・実績の表示 | 柔整では比較優良広告 |
| 「治療」等の医療用語 | 柔整では使用不可 |
「なぜ禁止されるのか」という考え方は参考になる。「どうすれば載せられるか」は参考にならない。
医科の解説で「こうすれば掲載できます」と書かれている部分は、ほぼすべて限定解除を前提としています。柔整には適用できません。
7. 正しい情報源の見分け方

ウェブで情報を探すとき、柔整向けかどうかを見分ける必要があります。
7-1. 一次情報源
| 情報源 | 内容 |
|---|---|
| 柔道整復師法 第24条 | 広告可能事項の限定列挙。すべての出発点 |
| 厚生省告示第70号 | 「ほねつぎ」「接骨」等の広告可能事項 |
| あはき・柔整広告ガイドライン | 2025年2月公布。虚偽・誇大の類型を明文化 |
| 厚生労働省の検討会資料 | 広告該当性の判断基準など |
| 所轄保健所 | 個別事案の相談先。相談は無料 |
7-2. 記事を見分けるチェックポイント
| 確認点 | 柔整向けなら |
|---|---|
| 根拠法の記載 | 「柔道整復師法第24条」が出てくる |
| 用語 | 「施術」「施術所」を使っている |
| 業務範囲 | 「5傷病」に言及している |
| 限定解除 | 「柔整には限定解除がない」と明記している |
| 危険な兆候 | 「医療法第6条の5」を根拠にしている |
| 危険な兆候 | 「治療」という語を使っている |
| 危険な兆候 | 「条件を満たせばビフォーアフターは可能」と書いている |
7-3. 制作会社への確認
制作会社に、次の一言を投げてみてください。
「柔整には限定解除の仕組みがないので、ビフォーアフターは条件を満たしても使えませんよね?」
ここで話が通じる会社は、柔整の規制を正確に理解しています。「え、条件を満たせば大丈夫ですよ」と返ってきたら、医療広告GLの知識で対応しているということです。
制作会社への発注条件は、整骨院のホームページ制作ガイドにまとめています。
8. よくある質問FAQ

Q1. 整形外科と接骨院を併設しています。どちらのGLが適用されますか?
それぞれの広告に、それぞれのガイドラインが適用されます。整形外科の広告は医療広告GL、接骨院の広告は柔整GLです。同じウェブサイトで扱う場合は、どの部分がどちらの業態かを明確に区分してください。混在させると、柔整部分に医科の表現が紛れ込みます。
Q2. 医科では体験談も条件付きで載せられるのでは?
いいえ。患者の体験談は医療広告ガイドラインでも禁止されており、限定解除の対象外です。この点については医科も柔整も同じく使えません。
Q3. なぜ柔整だけ限定解除がないのですか?
柔道整復師法とあはき法に、医療法第6条の5第3項に相当する規定が置かれていないためです。制度設計の違いであり、現行法上そうなっているとしか言えません。業務範囲が5傷病に限定されていること、療養費制度との関係などが背景にあると考えられます。
Q4. 医療広告GLの解説記事は読む価値がないですか?
そんなことはありません。虚偽広告・誇大広告・比較優良広告の「考え方」は共通しており、理解の助けになります。ただし「どうすれば掲載できるか」という部分は限定解除を前提としているため、柔整には適用できません。
Q5. 制作会社が「医療広告GLに準拠しています」と言っています
それは柔整の施術所にとって準拠していないのと同じです。適用されるのはあはき・柔整広告ガイドラインです。発注時に「柔道整復師法第24条および2025年2月公布のあはき・柔整広告ガイドラインに準拠すること」と明記してください。
Q6. 鍼灸院も柔整と同じガイドラインですか?
はい。あはき・柔整広告ガイドラインは、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復の4つをまとめて扱っています。根拠法はあはき法第7条と柔道整復師法第24条で分かれていますが、ガイドラインは共通です。
Q7. 整体院にはどちらも適用されないのですか?
施術所の広告規制としては、どちらも直接適用されません。ただし景品表示法と医師法は適用されます。実際に消費者庁が整体・カイロ系事業者に措置命令を出した事例もあります。「規制がない」わけではありません。
Q8. どちらが厳しいか、一言でまとめると?
柔整の方が厳しいです。限定解除がなく、業務範囲が5傷病に限定され、「治療」という語も使えません。医科でできることの多くが柔整ではできない、と理解しておいてください。
9. まとめ|医科の事例は参考にしない

この記事の結論は明確です。医科の広告事例を参考にしてはいけません。
名前が似ているため混同されますが、2つのガイドラインは別の法令に基づく別の制度です。最大の違いは限定解除の有無。医科には「条件を満たせば載せられる」という道がありますが、柔整にはその制度自体が存在しません。
本日中に確認すること
- 参考にしている情報源を確認:根拠法が「柔道整復師法第24条」になっているか
- 「治療」が使われていないか確認:医科向け情報を流用した形跡
- ビフォーアフター写真の有無を確認:医科の基準で載せていないか
今週中にできること
- 制作会社に確認する:「柔整には限定解除がない」で話が通じるか
- 発注書の文言を見直す:「あはき・柔整広告ガイドライン準拠」と明記
- 一次情報源をブックマーク:柔整師法第24条、告示第70号、GL本文
今月中に整えること
- 院内の判断基準を統一:参照するのはどのガイドラインかを明確に
- 併設業態の区分を確認:整体・鍼灸を併設している場合
- グレーゾーンは保健所に相談:柔整の担当窓口に聞く
情報を探すとき、「医療広告ガイドライン」と書かれた記事は、まず自分向けではないと疑ってください。柔整の情報は相対的に少ないですが、根拠法から遡れば必ず確認できます。
参考にした情報、柔整向けでしたか?
医科の基準で作った広告は、柔整では違反になります。判断基準そのものが違うためです。
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