広告ガイドライン解説

柔道整復師の名称独占と広告できる肩書き|「○○のプロ」が違反な理由

著者: インフォサクセス(Infosuccess) 2026年8月13日 公開 読了 約15分
名刺と名札の表記例。「○○のプロ」がNG、「柔道整復師」がOKであることを示したバナー
⚠️ この記事を読むべき方

整骨院・接骨院で肩書きや資格を掲載している方で、以下のいずれかに当てはまる方:

「名刺に『腰痛のプロ』と入れている」「HPのスタッフ紹介に経歴を書いている」「セミナー修了証を院内に飾っている」

柔道整復師は名称独占資格です。資格名を名乗れるのは有資格者だけですが、同時に「柔道整復師」以外の肩書きを広告に使うことは厳しく制限されています。
本記事では、名称独占の意味、広告できる肩書きの範囲、「○○のプロ」が違反になる理由、スタッフ紹介の書き方までを解説します。

1. 名称独占資格とは|業務独占との違い

名称独占と業務独占を示した図
図1: 柔道整復師の名称独占と業務独占。

まず制度の理解から始めます。柔道整復師は「名称独占」かつ「業務独占」の両方の性質を持つ資格です。

1-1. 2つの独占

種別 内容 柔道整復師の場合
名称独占 有資格者以外はその名称を名乗れない 該当する
業務独占 有資格者以外はその業務を行えない 該当する
📚 根拠条文

柔道整復師法 第15条:医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行ってはならない。(業務独占)
同法 第16条:柔道整復師でない者は、柔道整復師またはこれに紛らわしい名称を用いてはならない。(名称独占)
同法 第29条:違反した場合、50万円以下の罰金。

1-2. 他資格との比較

資格 名称独占 業務独占
柔道整復師 あり あり
医師 あり あり
はり師・きゅう師 あり あり
栄養士 あり なし
整体師 なし(民間資格) なし
カイロプラクター なし(民間資格) なし

整体師・カイロプラクターは法的な資格制度が存在しないため、誰でも名乗れます。この差が、後述する広告規制の差にもつながっています。

1-3. 「紛らわしい名称」とは

第16条は「柔道整復師またはこれに紛らわしい名称」を禁じています。完全に同じでなくても違反になりえます

名称 判定
柔道整復師 無資格者は使用不可
柔整師 紛らわしい名称に該当しうる
整復師 同上
接骨師 同上

逆に言えば、有資格者はこれらを堂々と名乗れます。ただし広告に使う場合は、次章の制限がかかります。

2. 広告できる肩書きは「柔道整復師」だけ

広告できる肩書きを示した図
図2: 広告できる肩書きと言い換え。

ここが本題です。資格を持っていることと、それを広告に書けることは別問題です。

2-1. 柔道整復師法第24条の規定

第24条第1項は、施術所について広告できる事項を限定列挙しています。人に関する記載として認められているのは、次のみです。

広告できる事項 記載例
柔道整復師である旨 柔道整復師
施術者の氏名 ○○ ○○
施術者の住所 (通常は施術所の所在地で足りる)
⚠️ これ以外の肩書きは書けない

「院長」「代表」「主任」といった役職名も、厳密には広告可能事項に含まれていません。
ただし実務上、役職名の記載が直ちに問題とされるケースは少ないのが実情です。問題になるのは、次章以降で扱う「専門性」「技能」「経歴」を示唆する肩書きです。

2-2. 安全に書ける形

❌ NG ✅ OK
腰痛のプロ 柔道整復師 ○○ 柔道整復師 ○○ ○○
スポーツ障害の専門家 柔道整復師
施術歴20年の院長 柔道整復師2名が在籍しています
骨盤矯正マスター 柔道整復師 ○○ ○○
当院代表・○○療法考案者 柔道整復師 ○○ ○○
✅ 最も安全な書き方

「柔道整復師 ○名が在籍しています」
個人を特定せず、資格と人数だけを示す形が最もリスクが低くなります。氏名を出す場合も「柔道整復師 ○○ ○○」で止めてください。
肩書きを盛らないことが、結果的に最も信頼できる表記になります。

使えない表現の全体像は、整骨院で使ってはいけない症状名・療法名一覧にまとめています。

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3. 「○○のプロ」が違反になる理由

○○のプロが違反になる理由を示した図
図3: 「○○のプロ」が違反になる3つの理由。

「腰痛のプロ」「スポーツ障害の専門家」といった肩書きは、複数の理由で違反になります。

3-1. 3つの問題が同時に発生する

# 問題 内容
1 業務範囲外の症状名 「腰痛」「肩こり」は5傷病に含まれない
2 技能に関する広告 第24条第2項が禁じる「技能」に該当
3 比較優良広告 「プロ」「専門家」は他者より優れていることを示唆
⚠️ 第24条第2項の存在を見落とさない

第24条は第1項で「広告できる事項」を列挙していますが、第2項でさらに制限をかけています
「前項の広告をする場合においても、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたってはならない」
つまり、広告できる事項を書く場合でも、技能・施術方法・経歴に踏み込んではいけないという二重の制限です。

3-2. 「専門」という語のリスク

❌ NG 問題
腰痛専門 業務範囲外 + 専門性の訴求
スポーツ外傷専門 専門性の訴求(業務範囲内でも)
交通事故専門 同上
産後骨盤専門 業務範囲外 + 専門性

「専門」は業務範囲内の傷病であっても避けるべき語です。医科では「標榜科」という制度で診療科を掲げられますが、柔整にそのような制度はありません。

❌ NG ✅ 言い換え
交通事故専門 交通事故後の打撲・捻挫の施術に対応しています
スポーツ外傷専門 スポーツ中の捻挫・挫傷の施術に対応しています

「専門」を「対応しています」に置き換えるだけで、伝わる内容はほぼ変わらず、リスクだけが下がります

3-3. その他の危険な肩書き

❌ NG肩書き 問題
○○のプロ / エキスパート 技能 + 比較優良
第一人者 / トップクラス 比較優良
○○療法考案者 / 開発者 施術方法の広告
○○協会認定マスター 技能の広告(団体の実在性次第で誇大にも)
元プロチームトレーナー 経歴の広告
テレビ出演歴あり 比較優良
著書多数 経歴 + 比較優良

4. 経歴・技能に関する表現の禁止

専門という語のリスクを示した図
図4: 「専門」という語のリスクと言い換え。

第24条第2項が禁じる「技能・施術方法・経歴」について、具体的に整理します。

4-1. 技能に関する表現

❌ NG ✅ 代替
確かな技術で対応します (削除)
高度な手技 手技療法
熟練の施術者 柔道整復師
丁寧な施術に定評があります (削除。比較優良にも該当)

4-2. 経歴に関する表現

❌ NG ✅ 代替
経験20年 / 施術歴15年 (削除)
○○大学卒業 (削除)
○○病院で研修 (削除)
海外で技術を習得 (削除)
プロスポーツ選手を担当 (削除)
年間○○件の施術実績 (削除)
📚 「○○年」の使い分け

混同されやすい点です。
❌ 施術者の経験年数:「経験20年の柔道整復師が施術」→ 経歴の広告
✅ 施術所の開業年数:「2016年開業」「地域に密着して20年」→ 施設の事実情報
「人」に紐づく年数は書けず、「施術所」に紐づく年数は書けるという違いです。

4-3. 施術方法に関する表現

❌ NG ✅ 代替
○○式療法 / ○○メソッド 手技療法
当院独自の施術 柔道整復施術
特殊な技術を用いた (削除)
最新の手技を導入 (削除)

5. スタッフ紹介ページの書き方

避けるべき肩書きを示した図
図5: 避けるべき肩書きの一覧。

スタッフ紹介は信頼形成に有効な一方、違反が集中しやすい箇所です。制約の中で何が書けるかを整理します。

5-1. 書けること・書けないこと

✅ 書ける ❌ 書けない
柔道整復師である旨 経験年数・施術歴
氏名 出身校・研修先
顔写真 受賞歴・出演歴
在籍人数 「○○のプロ」等の肩書き
趣味・人柄など資格と無関係な情報 保有する民間資格・認定名
✅ スタッフ紹介の完成例

スタッフのご紹介

【写真】
柔道整復師 ○○ ○○
地元○○市の出身です。休日は子どもと公園で過ごしています。
施術前には必ず内容をご説明しますので、気になることは何でもお尋ねください。

【写真】
受付 ○○ ○○
ご予約や保険の適用条件について、分かりやすくご案内します。

資格・氏名・人柄の3点で構成すれば、規制に触れずに親しみやすさを伝えられます。

5-2. 「人柄」で差をつける

技能や経歴が書けないぶん、資格と無関係な情報は自由に書けます

書ける内容
出身地 地元○○市の出身です
趣味 休日は釣りに出かけています
家族構成 3児の父です
施術時の心がけ 施術前に必ず内容をご説明します
好きなもの コーヒーが好きです
📚 なぜ人柄が有効なのか

整骨院を選ぶとき、多くの人は「効果」より「行きやすさ」で判断します。負傷して困っている人は、すでに施術を受けたいと思っており、あとは「どんな人がいるか」の不安を解消したいだけです。
経歴を並べるより、人柄が伝わる方が来院につながります。しかも規制に一切触れません。

5-3. 顔写真の扱い

項目 注意点
スタッフの顔写真 本人の同意があれば掲載可
患者さんが写り込む写真 個人情報。原則避ける
施術中の写真+効果を示唆する文言 効果保証に近づく

スタッフ本人の写真は問題ありませんが、退職時に削除する運用を決めておいてください。退職者の写真が残り続けると、実態と異なる表示になります。

6. 名刺・ユニフォーム・名札の表記

禁じられる3領域を示した図
図6: 第24条第2項が禁じる技能・経歴・施術方法。

見落とされやすい箇所です。名刺や名札も、渡す相手が不特定多数であれば広告に該当しえます

6-1. 名刺

❌ NG ✅ OK
腰痛改善のスペシャリスト 柔道整復師
○○協会認定 上級インストラクター 柔道整復師
施術歴20年 (削除)
○○治療院 院長 ○○接骨院 ○○ ○○
✅ 名刺の完成例

ほねつぎ ○○接骨院
柔道整復師 ○○ ○○
〒000-0000 ○○市○○町1-2-3
TEL 000-000-0000
月〜土 9:00-20:00(日祝休) / 駐車場3台

6-2. ユニフォーム・名札

項目 推奨
名札の表記 「柔道整復師 ○○」または氏名のみ
受付スタッフの名札 氏名のみ。資格名は入れない
避けるべき表記 「○○マスター」「認定トレーナー」等
⚠️ 無資格スタッフの名札に注意

受付や施術補助のスタッフが無資格の場合、「柔道整復師」と紛らわしい表記をしてはいけません
名札を統一デザインにしていると、うっかり全員に同じ肩書きを入れてしまうことがあります。有資格者と無資格者で表記を分けてください。

6-3. 院内の掲示物

施術所には施術者の氏名を掲示することが求められます

掲示すべき内容 記載例
施術者の氏名と資格 柔道整復師 ○○ ○○ / 柔道整復師 △△ △△
❌ 掲示してはいけないもの
セミナー修了証・認定証(民間団体のもの)
「○○療法認定施術者」等の額装
経歴を記した紹介ボード

民間団体の認定証を飾っている院は多くありますが、これは技能・経歴の広告に該当しえます。院内掲示の詳細は、整骨院の看板・のぼり・院内POPで書ける表現/書けない表現で解説しています。

7. 無資格者が「柔道整復師」を名乗るリスク

スタッフ紹介の可否を示した図
図7: スタッフ紹介で書けること・書けないこと。

名称独占の裏返しとして、無資格者が名乗ると罰則があります。院内の運用として注意が必要です。

7-1. 罰則

違反 根拠 罰則
無資格で柔道整復を業として行う 第15条 50万円以下の罰金(第29条)
無資格で「柔道整復師」等を名乗る 第16条 50万円以下の罰金(第29条)

7-2. 院内で起きやすい状況

状況 リスク
資格取得前の見習いが施術を行う 業務独占違反
無資格スタッフの名札に「柔道整復師」 名称独占違反
HPのスタッフ紹介で全員を「施術者」と表記 誤認を招く
受付が「先生」と呼ばれ、そのまま施術に入る 実質的に無資格施術
⚠️ 「先生」という呼称

「先生」自体は資格名ではないため、直ちに違法にはなりません。ただし、無資格者が「先生」と呼ばれて施術を行っている場合、業務独占違反の問題が生じます
呼称の問題ではなく、誰が施術しているかが本質です。

7-3. 院内での区分の明確化

やること 内容
名札を分ける 有資格者は「柔道整復師 ○○」、無資格者は氏名のみ
掲示で明示する 施術を担当する柔道整復師の氏名を掲示
HPで区別する 「柔道整復師」と「受付スタッフ」を分けて記載
業務範囲を分ける 無資格者は施術に関与しない運用にする

これは広告規制というよりコンプライアンス全般の問題ですが、広告表記から実態が推測されるため、あわせて整えておく必要があります。

8. よくある質問FAQ

名刺と名札の表記を示した図
図8: 名刺・名札・院内掲示の表記ルール。

Q1. 「院長」という肩書きは書けますか?

厳密には広告可能事項に含まれていません。ただし実務上、役職名の記載が直ちに指摘されるケースは少ないのが実情です。問題になるのは「腰痛のプロ」「経験20年の院長」のように、専門性・技能・経歴を示唆する形で使う場合です。「○○接骨院 院長 柔道整復師 ○○ ○○」程度であれば、リスクは相対的に低いと考えられます。

Q2. 民間団体の認定資格を書いてはいけませんか?

原則として避けてください。技能に関する広告に該当しえます。また、団体の実在性や認定の客観性が担保されていない場合、誇大広告と判断される可能性もあります。院内に認定証を飾るのも同様の理由で避けるべきです。

Q3. 「スポーツ外傷に対応しています」は書けますか?

書けます。「専門」ではなく「対応しています」という表現なら問題ありません。スポーツ中の捻挫・挫傷は業務範囲内なので、「スポーツ中の捻挫・挫傷の施術に対応しています」と書くのが最も安全です。

Q4. スタッフの顔写真は載せてもいいですか?

本人の同意があれば問題ありません。むしろ顔が見えることは来院のハードルを下げます。ただし、退職時に速やかに削除する運用を決めておいてください。退職者の写真が残っていると、実態と異なる表示になります。

Q5. 経歴を書けないと、信頼してもらえないのでは?

整骨院を選ぶ人の多くは、経歴より「行きやすさ」で判断します。負傷して困っている人は、すでに施術を受けたいと思っており、あとは不安を解消したいだけです。経歴を並べるより、施術の流れ・アクセス・人柄を伝える方が来院につながります。しかも規制に一切触れません。

Q6. 無資格のスタッフが施術補助をしてもいいですか?

柔道整復の施術そのものは有資格者が行う必要があります。物理療法機器の操作補助など、施術に当たらない業務は可能とされていますが、線引きは慎重に判断してください。判断に迷う場合は所轄保健所または業界団体に確認することを推奨します。名札や掲示で有資格者と区別することも忘れないでください。

Q7. 名刺も広告規制の対象ですか?

渡す相手が不特定多数であれば、広告に該当しえます。実務上は名刺も同じ基準で作成しておくのが安全です。「柔道整復師 ○○ ○○」に施術所の基本情報を添える形が最もリスクが低くなります。

Q8. 「地域に密着して20年」も経歴の広告ですか?

いいえ。これは施術所に紐づく事実情報なので書けます。区別のポイントは「人」か「施術所」かです。「経験20年の柔道整復師」は人に紐づくため経歴の広告になりますが、「2016年開業」「地域に密着して20年」は施設の事実情報として認められます。

9. まとめ|肩書きは「資格名+人数」に絞る

肩書き対応のアクションを示した図
図9: 肩書き対応のアクション。

柔道整復師は名称独占資格であり、「柔道整復師」と名乗れること自体が有資格者だけの特権です。しかし同時に、それ以外の肩書きを広告に使うことは厳しく制限されています。

対処はシンプルです。「柔道整復師 ○名が在籍しています」に統一する。 肩書きを盛らないことが、結果的に最も信頼できる表記になります。

本日中に確認すること

  1. HPのスタッフ紹介を確認:経験年数・出身校・受賞歴が入っていないか
  2. 名刺の肩書きを確認:「○○のプロ」「認定○○」が入っていないか
  3. 「専門」という語を検索:「腰痛専門」「交通事故専門」→「対応しています」に置換

今週中にできること

  1. スタッフ紹介を「資格・氏名・人柄」で書き直す:第5章の完成例を参考に
  2. 院内の認定証・修了証を外す:技能・経歴の広告に該当しうる
  3. 名札の表記を確認:有資格者と無資格者を区別する

今月中に整えること

  1. 名刺を作り直す:「柔道整復師 ○○ ○○」+ 施術所の基本情報
  2. 施術者の氏名掲示を確認:院内掲示が求められている
  3. 退職時の削除ルールを決める:写真・氏名の掲載を速やかに外す

肩書きを削ると訴求力が落ちるように感じますが、実際には「柔道整復師」という国家資格そのものが最も強い肩書きです。整体院・カイロにはこれがありません。盛らずに、資格名を正確に伝えることが差別化になります。

肩書きと経歴、何箇所残っていますか?

HP・名刺・名札・院内掲示・SNSプロフィール。分散していて全部確認するのは大変です。
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