整骨院・接骨院で施術前後の写真を使っている、または使いたい方で、以下のいずれかに当てはまる方:
「Instagramでビフォーアフターを投稿している」「※個人差がありますと書けば大丈夫だと思っていた」「医科のクリニックは載せているのに、なぜ整骨院はダメなのか」
ビフォーアフター写真は、整骨院の広告違反の中で最も見つかりやすく、最も代替が難しい類型です。文字と違って言い換えができず、削除するしかありません。
本記事では、なぜ禁止されるのかを法令から整理し、医科との違い、使える写真・使えない写真の判断基準、そして代替となる写真の使い方7案を解説します。
1. 結論|整骨院でビフォーアフター写真は使えない

先に結論を書きます。整骨院・接骨院の広告において、施術前後の比較写真は使用できません。 例外的な条件を満たせば使える、という道もありません。
該当する広告類型
| 類型 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 誇大広告 | 施術効果について著しく人を誤認させる表示 | 2025年2月ガイドライン |
| 虚偽広告 | 事実と異なる、または誤解を与える表示 | 同上 |
| 業務範囲外の訴求 | 姿勢・骨盤の状態は5傷病に含まれない | 柔道整復師法 第24条 |
ここが重要です。ビフォーアフター写真は、ほとんどのケースで2つ以上の違反に同時に該当します。
よくあるビフォーアフター写真は「姿勢が改善した」「骨盤の傾きが整った」という内容です。しかし:
① 姿勢・骨盤の状態は業務範囲外(5傷病に該当しない)
② 写真自体が効果を視覚的に保証している(誇大広告)
文字表現を直しても、写真が残っていれば違反は解消しません。
なぜ最も見つかりやすいのか
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 一目で分かる | 文章を読まなくても、画像を見た瞬間に判断できる |
| 目立つ位置に置かれる | 訴求力が高いため、トップやプロフィールに配置される |
| 拡散されやすい | SNSのリールやおすすめ表示で、探していない人にも届く |
| 証拠として残る | スクリーンショットで簡単に保存される |
広告規制の全体像は、【2025年2月施行】柔整・あはき広告ガイドライン完全解説で解説しています。
2. なぜ効果保証と判断されるのか

「事実を写しただけ」という反論をよく聞きます。しかし、広告における写真は「事実の記録」ではなく「訴求手段」として評価されます。
2-1. 写真は文字より強く効果を伝える
| 表現 | 受け手の解釈 | 判定 |
|---|---|---|
| 「姿勢が改善します」(文字) | そう主張している | 効果保証 |
| 施術前後の比較写真 | 実際に改善している | 効果保証(より強い) |
文字なら「主張」ですが、写真は「証拠」として受け取られます。つまり、文字で書けないことを写真で示すのは、より重い違反になります。
2-2. 再現性が保証されていない
ビフォーアフター写真が問題視される核心はここです。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 撮影条件が統制されていない | 立ち方、力の入れ方、カメラの角度、照明で見え方が変わる |
| 期間が明示されない | 1回後なのか、半年後なのかで意味が全く違う |
| 他の要因が排除されていない | 運動・生活習慣の変化・自然経過の影響を分離できない |
| 典型例か例外か分からない | 最も良かった1例を選んでいる可能性がある |
同じ人物・同じ日でも、立ち方と撮影角度を変えるだけで姿勢は大きく違って見えます。この事実がある限り、写真の比較は客観的な根拠になりません。
行政が問題視するのは「加工しているかどうか」ではなく、加工しなくても操作可能であるという構造的な問題です。
2-3. 業務範囲外の訴求を含む
そもそも、整骨院のビフォーアフター写真の題材はほぼ以下に限られます。
| よくある題材 | 業務範囲 |
|---|---|
| 姿勢(猫背・反り腰) | 業務範囲外 |
| 骨盤の傾き・左右差 | 業務範囲外 |
| O脚・X脚 | 業務範囲外 |
| 肩の高さ | 業務範囲外 |
| 可動域(前屈など) | 効果訴求に該当 |
柔道整復師の業務範囲は骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の5傷病です。姿勢や骨盤の状態はここに含まれません。詳しくは整骨院で使ってはいけない症状名・療法名一覧で解説しています。
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3. 医科の医療広告ガイドラインとの比較

「美容クリニックは載せているのに、なぜ整骨院はダメなのか」という疑問は当然です。適用される法令が根本的に違います。
3-1. 制度の違い
| 項目 | 医科(病院・クリニック) | 柔整(整骨院・接骨院) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 医療法 | 柔道整復師法 |
| ガイドライン | 医療広告ガイドライン | あはき・柔整広告ガイドライン |
| 広告の考え方 | 原則禁止 + 限定解除の仕組みあり | 広告可能事項の限定列挙のみ |
| ビフォーアフター | 条件付きで可能 | 使用不可 |
3-2. 決定的な違い「限定解除」の有無
医療広告ガイドラインには「広告可能事項の限定解除」という仕組みがあります。一定の要件を満たせば、通常は広告できない内容も掲載できるという制度です。
| 医科の限定解除要件(概要) |
|---|
| ① 医療を受ける者が自ら求めて入手する情報であること |
| ② 問い合わせ先を明記していること |
| ③ 自由診療の場合、通常必要な費用を明記すること |
| ④ 自由診療の場合、主なリスク・副作用等を明記すること |
美容クリニックがビフォーアフターを掲載できるのは、この限定解除に加えて治療内容・費用・リスクを併記しているためです。
柔道整復師法には、医療法のような限定解除の制度が存在しません。
第24条が広告できる事項を限定列挙しており、それを超える内容は掲載できません。「条件を書けば載せられる」という道自体がないのです。
これが、医科と柔整の最も大きな違いです。
3-3. 整体院・カイロとの違い
「無資格の整体院は載せているのに」という声もあります。
| 業態 | 広告規制 | ただし |
|---|---|---|
| 整骨院・接骨院 | 柔道整復師法の規制対象 | — |
| 整体院・リラクゼーション | 柔整法・あはき法の直接の対象外 | 景品表示法・医師法の対象にはなる |
整体院が規制を受けにくいのは事実ですが、それは施術所として届出をしていないためであり、有資格者の施術所である整骨院が同じ扱いを受けることはありません。むしろ、国家資格に基づく施術所だからこそ厳格に規制されています。
4. 「個人差があります」で回避できない理由

最も多い誤解がこれです。但し書きを添えれば大丈夫、という理解は成り立ちません。
4-1. 但し書きが有効な範囲
| 問題 | 但し書きで解決するか | 理由 |
|---|---|---|
| 効果の程度に幅がある | 一部有効 | 期待値を調整できる |
| 業務範囲外の訴求 | 解決しない | そもそも扱える領域ではない |
| 写真による効果の視覚的保証 | 解決しない | 画像の訴求力が注記を上回る |
4-2. なぜ解決しないのか
理由は2つあります。
理由1: 業務範囲の問題は但し書きの対象外
「姿勢が改善します(※個人差があります)」と書いても、姿勢が業務範囲外である事実は変わりません。但し書きは効果の程度を調整するものであって、扱える領域を拡げるものではありません。
理由2: 注記より画像の印象が強い
広告の判断は、受け手が全体としてどう認識するかで行われます。大きな比較写真の下に小さく注記があっても、受け手が受け取る印象は「効果がある」です。
景品表示法でも、強調表示に対して打消し表示が小さい・目立たない場合、打消しの効果は認められないという考え方があります。
大きな比較写真に小さな注記、という構成は典型的にこれに当てはまります。
4-3. 「効果には個人差があります」が有効なケース
この注記自体が無意味なわけではありません。業務範囲内の内容について、効果の程度を調整する場合には有効です。
| ❌ 無効なケース | ✅ 有効なケース |
|---|---|
| 姿勢のビフォーアフター写真 + 「個人差があります」 | 「施術後の経過には個人差があります」(文章のみ) |
| 「骨盤の歪みが整います(※個人差)」 | 「捻挫の回復までの期間には個人差があります」 |
5. 使える写真・使えない写真の判断基準

写真全般が使えないわけではありません。判断基準を持てば、使える写真は十分にあります。
5-1. 判断の3ステップ
| ステップ | 問い | NGなら |
|---|---|---|
| ① 効果を示していないか | この写真は「良くなった」ことを伝えているか | 使用不可 |
| ② 比較の構図でないか | 前後・左右・他者との比較になっていないか | 使用不可 |
| ③ 業務範囲内か | 5傷病に関係する内容か | 使用不可 |
5-2. 使えない写真の具体例
| ❌ 使えない写真 | 理由 |
|---|---|
| 施術前後の姿勢比較 | 効果の視覚的保証 + 業務範囲外 |
| 施術前後の可動域比較(前屈など) | 効果の視覚的保証 |
| 骨盤・肩の高さの左右比較 | 業務範囲外 + 効果訴求 |
| 「施術中の患者さんの笑顔」+ 感想 | 体験談に該当 |
| レントゲン・エコー画像の比較 | 効果の視覚的保証 + 診断の示唆 |
| 他院との比較を示す図 | 比較優良広告 |
5-3. 使える写真の具体例
| ✅ 使える写真 | 備考 |
|---|---|
| 院の外観 | 目印が写る構図にすると実用的 |
| 受付・待合スペース | 初来院の不安を下げる |
| 施術スペース(患者不在) | 清潔感が伝わる |
| 物理療法機器 | 設備の説明として |
| テーピングなどの資材 | 資材を並べた構図 |
| 駐車場 | 停め方の案内として実用的 |
| スタッフの集合写真 | 経歴・技能に触れないこと |
| 傷病の解説図・イラスト | 捻挫のメカニズムなど |
6. 代替となる写真の使い方7案

ビフォーアフターが使えないぶん、別の軸で信頼を作る必要があります。実務で使える7案を挙げます。
| # | 案 | 内容 | 伝わること |
|---|---|---|---|
| 1 | 施術の流れを写真で説明 | 受付→問診→施術→会計の各場面(患者不在または後ろ姿) | 初来院の不安が下がる |
| 2 | 院内ツアー | 入口から施術室までを順に撮影 | 雰囲気と清潔感 |
| 3 | 設備・資材の紹介 | 物理療法機器、テーピング資材を並べて撮影 | 対応できる施術内容 |
| 4 | 傷病の解説図 | 捻挫・打撲・挫傷のメカニズムを図解 | 専門性 |
| 5 | 固定・テーピングの実物 | 装着した状態の資材(効果比較にしない) | 具体的な施術内容 |
| 6 | アクセス案内の写真 | 最寄り駅から院までの道順、駐車場の停め方 | 来院のハードルが下がる |
| 7 | スタッフの人柄 | 集合写真、受付の様子(経歴には触れない) | 安心感 |
整骨院を探している人の不安は「効果があるか」より「初めてでも大丈夫か」「どうやって行くか」にあります。
受傷して困っている人は、すでに施術を受けたいと思っています。あとは行きやすさの不安を取り除くだけです。ビフォーアフターより、施術の流れとアクセス案内の方が来院につながります。
解説図を作るときの注意
| ❌ 避ける | ✅ OK |
|---|---|
| 痛みを表す放射状マーク付きの肩・腰のイラスト | 足関節の構造図(靱帯の位置など) |
| 「歪んだ骨盤」と「整った骨盤」の対比図 | 捻挫が起こるメカニズムの図 |
| 姿勢の良い例・悪い例の比較 | 受傷直後の対応手順(安静・冷却・圧迫・挙上)の図 |
イラストも広告の一部です。文字と同じ基準で判断してください。
7. 患者さんが写る写真の許諾の取り方

ビフォーアフター以外でも、患者さんが写る写真には別の注意が必要です。
7-1. 個人情報・肖像権の問題
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 肖像権 | 本人の同意なく容貌を公表することは権利侵害になりうる |
| 個人情報保護 | 来院した事実は個人情報。第三者に開示することになる |
| 要配慮個人情報 | 負傷や施術に関する情報は取扱いに特別な配慮が必要 |
顔が写っていなくても、体型・服装・タトゥー・背景などから本人が特定できる場合は問題になります。
また、来院している事実自体が個人情報です。「後ろ姿だから大丈夫」と安易に判断しないでください。
7-2. 許諾を取る手順
| # | 手順 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 書面で同意を得る | 口頭のみは避ける。後日の争いを防ぐ |
| 2 | 使用目的を明示する | ホームページ / SNS / チラシ など、媒体を具体的に |
| 3 | 使用期間を明示する | 無期限ではなく期間を区切る |
| 4 | 撤回できることを伝える | 後から取り下げを申し出られる旨を明記 |
| 5 | 控えを渡す | 同意書の写しを患者さんに渡す |
・撮影日と撮影内容
・使用する媒体(ホームページ、Instagram、チラシ等を個別に列挙)
・使用期間(例:同意日から2年間)
・顔の写り込みの有無
・撤回の方法と連絡先
・撤回した場合、速やかに使用を停止する旨
・患者氏名・署名・日付
7-3. 撮影しないのが最も安全
ここまで手順を書きましたが、実務上の推奨は「患者さんが写る写真は使わない」です。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 管理コストが高い | 同意書の保管、期間管理、撤回対応 |
| 撤回リスクがある | 後日取り下げを求められたら全媒体から削除が必要 |
| 効果が限定的 | 院内の様子や設備の写真で代替できる |
| 体験談との線引きが曖昧 | 写真+感想の組み合わせは体験談に該当する |
スタッフのみが写る写真、患者不在の院内写真で、必要な情報は十分に伝えられます。
8. よくある質問FAQ

Q1. 過去に投稿したビフォーアフター写真は消すべきですか?
はい。削除またはアーカイブを推奨します。特にInstagramの過去投稿は遡って確認してください。アーカイブなら公開状態ではなくなり、必要なら後から戻せます。件数が多い場合は、直近1年分から着手すれば実務上は十分です。
Q2. 本人の同意があれば掲載できますか?
できません。同意は肖像権・個人情報の問題を解決するだけで、広告規制の問題は残ります。ビフォーアフター写真が禁止されるのは、患者さんの権利ではなく広告を見る第三者が誤認することが理由だからです。本人の同意では解決しません。
Q3. 施術者自身の体で撮ったビフォーアフターならどうですか?
これも使用できません。誰の体であるかは判断に影響しません。広告として効果を視覚的に示している事実は変わらないためです。「モデルです」と注記しても同様です。
Q4. 医科の美容クリニックは載せています。なぜ差があるのですか?
適用される法令が違うためです。医療法には「広告可能事項の限定解除」という仕組みがあり、治療内容・費用・リスクを併記すれば通常広告できない内容も掲載できます。一方、柔道整復師法にはこの制度が存在しません。第24条の限定列挙を超える内容は掲載できず、条件を満たせば載せられるという道自体がありません。
Q5. 「症例写真」という名目ならどうですか?
名称を変えても実質は同じです。判断は名目ではなく内容で行われます。施術前後を比較する構図である以上、症例写真と呼んでも効果の視覚的保証に該当します。
Q6. レントゲンやエコー画像の比較は?
より問題が大きくなります。効果の視覚的保証に加えて、診断行為を示唆するという別の問題が生じます。画像診断は医師の業務であり、施術所が診断結果として画像を提示することは医師法上の問題になりえます。
Q7. ビフォーアフターを使わずに、施術内容をどう伝えればいいですか?
本記事第6章の7案を参照してください。特に有効なのは「施術の流れの説明」と「アクセス案内」です。整骨院を探している人は、すでに施術を受けたいと思っています。不安なのは「初めてでも大丈夫か」「どうやって行くか」であって、効果の証明ではありません。
Q8. 制作会社から「ビフォーアフターを入れましょう」と提案されました
断ってください。行政に対する広告責任は施術所の開設者が負います。「制作会社の提案だった」は通用しません。発注時に「ビフォーアフター写真は使用しないでください」と書面で伝えておくと、こうした提案自体を防げます。詳しくは整骨院のホームページ制作ガイドで解説しています。
9. まとめ|写真で効果を示さない

ビフォーアフター写真の問題は、突き詰めると「写真で効果を示そうとしている」という一点に集約されます。この発想を捨てれば、判断は簡単になります。
写真の役割を「効果の証明」から「院を知ってもらう手段」に切り替える。これだけで、使える写真は一気に増えます。院内の様子、設備、アクセス、施術の流れ——伝えるべきことは十分にあります。
本日中にできること
- 全媒体でビフォーアフター写真を探す:HP・Instagram・GBP・チラシ・院内掲示
- 見つかったら削除またはアーカイブ:文字と違い言い換えができない
- 可動域の比較写真も確認:前屈などの比較も同じ扱い
今週中にできること
- 代替写真を撮影する:外観・受付・施術室・設備・駐車場
- 施術の流れを写真で説明する:第6章の案1。最も効果が高い
- アクセス案内の写真を作る:最寄り駅からの道順、駐車場の停め方
今月中に仕組みにすること
- 写真の判断基準を院内で共有:第5章の3ステップを掲示する
- 制作会社・スタッフに方針を伝える:「ビフォーアフターは使わない」を明文化
- 患者さんが写る写真は原則使わない方針にする:管理コストとリスクに見合わない
ビフォーアフターは訴求力が高いぶん、使いたくなる気持ちは自然です。しかし、これは文字の違反と違って言い換えができません。見つかれば削除するしかなく、印刷物なら刷り直しになります。今日のうちに全媒体を確認しておいてください。
過去の投稿、全部確認できていますか?
Instagramの過去投稿を1件ずつ遡るのは、100投稿で1時間以上かかります。
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