整骨院・接骨院で資格や認定を掲載している方で、以下のいずれかに当てはまる方:
「セミナーで取得した認定資格をHPに載せている」「院内に修了証を飾っている」「学会の会員であることを書いている」
資格の記載は「信頼につながる」と思われがちですが、柔整の広告で書ける資格は「柔道整復師」だけです。民間資格・認定名・学会名は、原則として広告できません。
本記事では、書ける資格・書けない資格の線引き、なぜ認定資格が問題になるのか、院内の修了証の扱い、複数資格を持つ場合の書き方までを解説します。
1. 結論|広告できる資格は国家資格のみ

先に結論を書きます。柔道整復師の施術所の広告で書けるのは、国家資格の名称だけです。
1-1. 書けるもの・書けないもの
| 種別 | 広告での扱い | 例 |
|---|---|---|
| 国家資格 | 書ける | 柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師 |
| 民間資格 | 書けない | ○○協会認定○○、○○療法認定士 |
| セミナー修了 | 書けない | ○○セミナー修了、○○講座修了 |
| 学会・団体の会員資格 | 原則書けない | ○○学会正会員、○○協会会員 |
| 海外の資格 | 書けない | 米国○○協会認定、豪州カイロプラクティック学位 |
1-2. 根拠
第1項で広告できる事項を限定列挙しており、人に関して認められているのは「柔道整復師である旨」と「氏名」のみです。
第2項はさらに「その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたってはならない」と定めています。
民間資格・認定名は、この「技能」に該当します。資格を持っていること自体は自由ですが、広告に書くことはできません。
1-3. なぜ勘違いされやすいのか
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 資格が多いほど信頼される | 広告規制上は、書けば書くほどリスクが上がる |
| 取得した以上、載せる権利がある | 取得は自由。広告は別のルール |
| 他院も載せているから問題ない | 常態化は適法性の根拠にならない |
| 整体院は載せている | 整体院は柔整法の対象外。同じ基準ではない |
肩書き全般の扱いは、柔道整復師の名称独占と広告できる肩書きで解説しています。
2. なぜ民間資格・認定名が書けないのか

単に「列挙されていないから」というだけではありません。実質的な理由が3つあります。
2-1. 技能に関する広告に該当する
第24条第2項が禁じる「技能」とは、施術者の腕前や習熟度を指します。
| 表現 | 受け手が読み取ること |
|---|---|
| ○○療法認定士 | この療法について高い技能を持っている |
| 上級インストラクター | 一般の施術者より上位の技能 |
| マスターコース修了 | 高度な技術を習得している |
いずれも「技能が高い」というメッセージを含みます。これが規制対象です。
2-2. 客観性が担保されていない
国家資格は、法律で定められた養成課程と国家試験を経て与えられます。誰が取得しても一定の水準が担保されます。
一方、民間資格は認定団体が独自の基準で発行しています。1日のセミナー参加で得られるものから、数年の課程を要するものまで幅があり、外部からは区別できません。
利用者は「認定」という語から公的なものを連想しますが、実態は多様です。ここに誤認のリスクがあります。
2-3. 誇大広告になりうる
| 状況 | 問題 |
|---|---|
| 実態のない団体の認定を掲載 | 虚偽広告 |
| 短期講座の修了を「認定資格」として表示 | 誇大広告 |
| 国家資格と並べて表記し、区別がつかない | 誤認誘引 |
特に3つ目は起こりやすいパターンです。「柔道整復師 / ○○療法認定士」と並べて書くと、どちらも同等の公的資格だと受け取られます。
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3. 書ける資格・書けない資格の一覧

具体的に整理します。迷ったら「国家資格かどうか」で判断してください。
3-1. 書ける資格(国家資格)
| 資格名 | 根拠法 | 掲載の条件 |
|---|---|---|
| 柔道整復師 | 柔道整復師法 | — |
| はり師 | あはき法 | 該当する施術所の届出が必要 |
| きゅう師 | あはき法 | 同上 |
| あん摩マッサージ指圧師 | あはき法 | 同上 |
はり師の資格を持っていても、鍼灸院としての開設届を出していなければ、その施術所の広告に「はり師」と書くことはできません。
施術所として届け出ていない業務を広告に掲げると、実態と異なる表示になります。詳しくは第4章で扱います。
3-2. 書けない資格・認定
| 種別 | 具体例 |
|---|---|
| 民間の認定資格 | ○○療法認定士、○○整体師、○○セラピスト |
| 協会・団体の認定 | ○○協会認定インストラクター、○○認定トレーナー |
| セミナー・講座の修了 | ○○セミナー修了、○○マスターコース修了 |
| 海外の資格 | 米国○○協会認定、豪州○○大学修了 |
| スポーツ関連の民間資格 | ○○トレーナー資格、○○コンディショニング認定 |
| 教育・研修の履歴 | ○○研修修了、○○プログラム受講 |
3-3. 判断に迷うケース
| ケース | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 介護支援専門員(ケアマネジャー) | 書けない | 公的資格だが、施術所の広告可能事項ではない |
| 登録販売者 | 書けない | 同上 |
| アスレティックトレーナー(JSPO-AT) | 書けない | 公認資格だが国家資格ではない |
| 教員免許 | 書けない | 施術と無関係 |
ケアマネジャーやアスレティックトレーナーは、公的性の高い資格です。しかし柔整の施術所の広告可能事項に含まれていない以上、書くことはできません。
基準は「立派な資格かどうか」ではなく、「第24条の列挙に含まれるか」です。
4. 複数の国家資格を持つ場合の書き方

柔道整復師とはり師・きゅう師を併せ持つケースは珍しくありません。ただし書き方には条件があります。
4-1. 施術所の届出が前提
| 状況 | 広告での記載 |
|---|---|
| 柔整・あはき両方の開設届を出している | 両方の資格・業務を記載できる |
| 柔整の届出のみ(あはきの資格は保有) | 「はり師」と書くことはできない |
「はり師の資格を持っているから、HPに書いてもいいだろう」とはなりません。
その施術所で鍼施術を行える体制になっているか(=届出があるか)が判断基準です。届出がないのに掲げると、実態と異なる表示になります。
4-2. 両方届け出ている場合の書き方
○○接骨院・○○鍼灸院
柔道整復師 ○○ ○○
はり師・きゅう師 ○○ ○○
【接骨院】骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の施術
【鍼灸院】はり・きゅうによる施術(療養費は医師の同意書が必要です)
ポイントは業務ごとに区分して書くことです。混在させると、どちらの資格でどこまでできるのかが伝わりません。
4-3. 併設時の注意点
| 項目 | 注意点 |
|---|---|
| 開設届 | 柔整とあはきで別々に必要 |
| 施術録 | それぞれの業務について分けて記録 |
| 療養費 | 柔整は5傷病、あはきは医師の同意書が必要 |
| 広告表示 | どの資格に基づく施術かを明示する |
| 院内掲示 | それぞれの施術者氏名と資格を掲示 |
4業態の制度上の違いは、接骨院・整骨院・整体院・カイロの違いを一枚で理解するで解説しています。
5. 学会・団体への所属をどう扱うか

「○○学会正会員」「○○協会所属」といった記載も、原則として広告できません。
5-1. なぜ書けないのか
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 広告可能事項に含まれない | 第24条の列挙に所属団体はない |
| 技能・経歴を示唆する | 専門性が高いという印象を与える |
| 客観性が担保されない | 入会条件は団体によって大きく異なる |
医療機関の場合、医療広告ガイドラインにより厚生労働大臣が定める団体の専門医資格などは、条件付きで広告できます。
しかし柔整には、そうした「広告可能な学会・資格を定める仕組み」が存在しません。この違いが、記載可否の差を生んでいます。
5-2. 例外的に扱えるケース
| ケース | 扱い |
|---|---|
| 療養費の受領委任に関する届出先団体 | 制度上必要な範囲での記載は問題になりにくい |
| 保険者への申請書類への記載 | 広告ではないため対象外 |
| HPやチラシでの「○○会所属」の表示 | 広告に該当。避けるべき |
5-3. 実務上の対応
所属団体の記載は削除するのが最も安全です。信頼を伝えたい場合は、次章以降の方法に置き換えてください。
| ❌ 削除する | ✅ 代わりに書く |
|---|---|
| ○○学会正会員 | 柔道整復師 ○○ ○○ |
| ○○協会認定施術所 | 2016年開業 ○○市○○町 |
| ○○研究会所属 | 柔道整復師2名が在籍しています |
6. 院内の修了証・認定証の扱い

院内に賞状や認定証を飾っている院は多くあります。これも広告に該当しえます。
6-1. 院内掲示も広告
施術所は不特定多数が立ち入る場所です。待合室に掲示されている以上、認知性の要件を満たします。
実際、保健所の立入検査で最初に確認されるのが院内掲示物です。額装された認定証は目立つため、必ず目に留まります。
6-2. 掲示の可否
| 掲示物 | 可否 |
|---|---|
| 施術者の氏名と資格(柔道整復師 ○○ ○○) | 掲示すべき |
| 施術日・施術時間 | 掲示すべき |
| 自費メニューの料金 | 掲示すべき |
| 柔道整復師免許証(原本) | 掲示義務はない。掲示しても問題はないが必須ではない |
| 民間団体の認定証・修了証 | 技能の広告に該当しうる |
| セミナー参加の記念写真 | 経歴の示唆 |
| 施術者の経歴を記した紹介ボード | 経歴の広告 |
6-3. 外すべきか迷う場合
| 判断基準 | 該当すれば外す |
|---|---|
| 技能の高さを示唆するか | 「認定」「上級」「マスター」等の語がある |
| 経歴を示すか | 研修先・修了年・受講歴が記載されている |
| 患者から見えるか | 待合室・受付・施術室に掲示している |
患者さんが立ち入らない場所であれば、掲示しても広告にはなりません。
努力の証を残しておきたい場合は、スタッフルームや事務スペースに移してください。捨てる必要はありません。
院内掲示の全体像は、整骨院の看板・のぼり・院内POPで書ける表現/書けない表現で解説しています。
7. 資格が書けない中で信頼を伝える方法

「資格を書けないなら、何で差をつけるのか」という問いに答えます。実は、資格の羅列は思われているほど効いていません。
7-1. 利用者が見ているもの
| 順位 | 判断材料 | 書けるか |
|---|---|---|
| 1 | 近いか(アクセス・駐車場) | 書ける |
| 2 | 今日行けるか(施術時間・予約) | 書ける |
| 3 | いくらか(料金・保険) | 書ける |
| 4 | 初めてでも大丈夫か(施術の流れ) | 書ける |
| 5 | どんな人がいるか(顔・人柄) | 書ける |
| — | 保有資格の数 | 書けない |
負傷して探している人の関心は、圧倒的に上位4つに集中しています。資格の羅列は、実際には判断材料になっていません。
7-2. 資格の代わりに書けること
| # | 書けること | 効果 |
|---|---|---|
| 1 | 「柔道整復師」であること | 国家資格。整体院にはない最大の差 |
| 2 | 療養費支給申請ができること | 制度上の優位。整体院では不可能 |
| 3 | 在籍人数 | 体制が伝わる |
| 4 | 開業年 | 施術所に紐づく事実なので書ける |
| 5 | 施術の流れ | 初来院の不安を下げる。最も効く |
| 6 | 院内の写真 | 清潔感・雰囲気 |
| 7 | スタッフの人柄 | 資格と無関係な情報は自由に書ける |
7-3. 「柔道整復師」の価値を伝える
当院について
○○市○○町の接骨院です。柔道整復師2名が在籍しています。
骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷について施術を行い、条件を満たす場合は医療保険療養費の支給申請ができます。
2016年に開業し、地域の皆さまにご利用いただいています。
民間資格を10個並べるより、この5行の方が伝わります。国家資格であること、保険が使えること、地域で続いていること。これらは整体院には書けない内容です。
8. よくある質問FAQ

Q1. 民間資格の取得自体が問題なのですか?
いいえ。資格を取得することも、その知識を施術に活かすことも自由です。問題になるのは広告に書くことだけです。学んだ内容を実務に反映させることに制限はありません。
Q2. 他院は認定資格を載せています。指摘されないのでは?
指摘は通報や巡回など、何らかのきっかけがあって初めて動きます。載せているのに指導されていない院は、単にきっかけが発生していないだけです。適法だから放置されているわけではありません。なお、通報経路として最も多いのは同業他院です。
Q3. アスレティックトレーナー資格は公認資格ですが書けませんか?
書けません。基準は「立派な資格かどうか」ではなく「第24条の広告可能事項に含まれるか」です。人に関して認められているのは「柔道整復師である旨」と「氏名」のみで、それ以外の資格は公的性が高くても対象外です。
Q4. 院内に飾っている認定証は外すべきですか?
患者さんが立ち入る場所であれば外してください。スタッフルームや事務スペースなら掲示して構いません。捨てる必要はなく、場所を移すだけで解決します。
Q5. はり師の資格も持っています。HPに書けますか?
鍼灸院としての開設届を出していれば書けます。届出がない場合は書けません。資格の保有と、その施術所で当該業務を行える体制があることは別問題です。届出を出せば、接骨院と鍼灸院を併設する形で両方の資格・業務を記載できます。
Q6. 「柔道整復師免許 第○○号」のように番号を書いてもいいですか?
免許番号の記載は広告可能事項に含まれていません。「柔道整復師 ○○ ○○」で止めるのが安全です。番号を書いても信頼性が上がるわけではなく、リスクだけが増えます。
Q7. 学会で発表した実績も書けませんか?
書けません。経歴に関する事項に該当します。第24条第2項が明示的に禁じている領域です。研究活動自体は自由ですが、広告での訴求はできません。
Q8. 資格を書けないと、整体院と区別がつかないのでは?
逆です。「柔道整復師」という国家資格名こそが、整体院と区別する最大の要素です。整体院には国家資格も療養費もありません。民間資格を並べると、かえって整体院と同じ土俵に見えてしまいます。国家資格であることと療養費が使えることを明確に伝える方が、はるかに差別化になります。
9. まとめ|「柔道整復師」だけで十分に強い

資格の記載について、判断基準はひとつです。国家資格かどうか。 柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師。これ以外は書けません。
民間資格を削ると訴求力が落ちるように感じますが、実際には「柔道整復師」という国家資格そのものが最も強いのです。整体院・カイロにはこれがありません。認定資格を並べるほど、かえって国家資格の価値が埋もれます。
本日中に確認すること
- HPのスタッフ紹介を確認:民間資格・認定名・学会名が入っていないか
- 院内を見回す:待合室・受付・施術室に認定証が飾られていないか
- 名刺を確認:「○○協会認定」等が入っていないか
今週中にできること
- 民間資格の記載を削除:HP・SNS・名刺・院内掲示から
- 認定証をスタッフルームに移す:捨てる必要はない
- 「柔道整復師 ○名が在籍」に統一:シンプルな表記に置き換える
今月中に整えること
- 療養費が使えることを明記:整体院との最大の差
- 施術の流れを写真で説明:資格より効く信頼形成の方法
- スタッフの人柄を書く:資格と無関係な情報は自由に書ける
資格の記載は、書けば書くほど信頼が増すものではありません。国家資格を正確に伝え、あとは行きやすさで勝負する。 これが規制下での最も現実的な戦い方です。
民間資格の記載、何箇所残っていますか?
HP・名刺・院内の額装・SNSプロフィール。分散していて全部確認するのは大変です。
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