広告ガイドライン解説

整骨院で「治療」という言葉は使えるのか|法令根拠と安全な言い換え

著者: インフォサクセス(Infosuccess) 2026年8月12日 公開 読了 約15分
「治療」に×、「施術」に○を示したバナー。広告表現の判断と施術風景のイラスト
⚠️ この記事を読むべき方

整骨院・接骨院で「治療」という言葉を使っている、または使うか迷っている方で、以下のいずれかに当てはまる方:

「交通事故治療と書いているが問題ないのか」「院名に『治療院』が入っている」「患者さんは『治療』と言うのに、こちらだけ言い換えるのは不自然では」

「治療」は、整骨院の広告で最も頻繁に使われ、最も見落とされている禁止語です。症状名のように意識されにくく、業界の慣用表現として深く定着しているためです。
本記事では、なぜ「治療」が使えないのかを法令から整理し、使える場面・使えない場面の線引き、安全な言い換え一覧、患者さんへの説明の仕方までを解説します。

1. 結論|施術所の広告に「治療」は使えない

治療が問題になる3つの理由を示した図
図1: 「治療」が3方向から問題になる理由。

先に結論を書きます。柔道整復師の施術所の広告において、「治療」という語は使用できません。

1-1. なぜ問題になるのか

問題 内容
医行為を示唆する 「治療」は医師が行う医行為を指す語として一般に理解されている
誤認を招く 医療機関と同等の行為を行っていると受け取られる
効果保証に近い 「治す」という結果を含意する
⚠️ 「治療」は3つの意味で危険

症状名の違反(肩こり・腰痛など)は業務範囲の問題ひとつですが、「治療」は医師法・誤認誘引・効果保証の3方向から問題になります。
それでいて、業界では最も自然に使われている語です。意識して探さないと気づけません。

1-2. 最も多い使用箇所

箇所 典型例 頻度
交通事故対応 「交通事故治療」「むちうち治療」 最多
メニュー名 「電気治療」「温熱治療」 多い
院名 「○○治療院」
本文中の言い回し 「治療を受ける」「治療内容」「治療計画」 非常に多い
口コミ返信 「治療を担当させていただきました」

特に「交通事故治療」は業界の標準的な呼称として定着しており、ほぼすべての院が使っています。しかし、これがそのまま違反表現です。

交通事故対応の書き方は、整骨院の交通事故対応で違反にならない広告表現で詳しく解説しています。

2. 法令上の根拠|なぜ医師法が関わるのか

治療が残っている場所を示した図
図2: 「治療」が使われている典型的な場所。

「治療」が使えない根拠は、柔道整復師法だけではありません。複数の法令が重なっています

2-1. 3つの法令

法令 関係する条文 問題となる点
医師法 第17条(医業の禁止) 医師でない者が医業を行うことの禁止
柔道整復師法 第24条(広告の制限) 広告できる事項の限定列挙
あはき・柔整広告ガイドライン 2025年2月公布 虚偽・誇大広告の類型を明文化

2-2. 医師法との関係

📚 医業とは何か

医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めています。
ここでいう「医業」とは、医行為を反復継続する意思をもって行うことを指します。医行為とは、医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為です。
柔道整復の施術は医行為ではありません。 だからこそ柔道整復師が行えるわけですが、逆に言えば「治療」という医行為を連想させる語を使うことはできません。

2-3. 柔道整復師法との関係

柔道整復師法は、施術者が行う行為を一貫して「施術」と表現しています。

法令上の用語 使われ方
施術 柔道整復師が行う行為
施術所 柔道整復師が施術を行う場所
施術者 施術を行う柔道整復師
治療 法令上、柔整に関して使われていない

法律が「施術」という語を選んでいるという事実が、そのまま答えになっています。制度上、柔道整復師が行うのは施術であって治療ではありません。

2-4. 罰則

法令 罰則
柔道整復師法 第30条第5号 30万円以下の罰金(広告制限違反)
医師法 第31条 3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(無資格医業)
⚠️ ただし実務上は行政指導が先行する

「治療」という語を使ったからといって、直ちに医師法違反で摘発されるわけではありません。実際には所轄保健所からの行政指導が入り、修正を求められるのが通常の流れです。
ただし、指導を無視し続けた場合は次の段階に進みます。指摘されたら速やかに修正してください。

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3. 「治療」と「施術」の違い

治療が使えない法的根拠を示した図
図3: 「治療」が使えない法令上の根拠。

単なる言葉の言い換えではありません。指している行為の内容が違います

3-1. 定義の違い

項目 治療 施術
行う人 医師・歯科医師 柔道整復師・あはき師
前提となる行為 診断 状態の確認
目的 疾病の治癒 負傷に対する処置
法令上の位置づけ 医行為 医行為ではない

3-2. 「診断」も使えない

「治療」とセットで注意すべきなのが「診断」です。

❌ 使えない語 ✅ 代替
診断する 状態を確認する
診察する 施術前にお話を伺う
診断名 負傷の状態
検査する 患部の状態を確認する
問診 施術前の聞き取り(※業界では慣用的に使われるが、書面では注意)
⚠️ 「診断」は医師法上より重い

「治療」は主に広告規制上の問題ですが、「診断」は医師の独占業務です。施術所が診断を行っていると受け取られる表現は、より重い問題になります。
レントゲン画像の提示、診断名の断定、「○○症です」という説明は避けてください。

3-3. 使い分けの原則

✅ 判断の原則

医師が行うことを連想させる語は使わない。
「治療」「診断」「診察」「検査」「処方」「患者を診る」——これらはすべて医療機関の用語です。
施術所では「施術」「確認」「お話を伺う」「ご案内」という語彙に統一してください。

4. 使えない場面の一覧|媒体別チェック

治療と施術の違いを比較した図
図4: 「治療」と「施術」の違い。

「治療」は意識せずに使ってしまう語です。媒体ごとに探す場所を決めておくと漏れがなくなります。

4-1. ホームページ

探す場所 典型的な記述
トップページのキャッチ 「根本治療で改善へ」
メニューページ 「電気治療」「温熱治療」「交通事故治療」
初めての方へ 「治療の流れ」「治療にかかる時間」
料金ページ 「治療費」「1回の治療につき」
ブログ記事 「治療を続けることで」
フォームの項目名 「ご希望の治療内容」

4-2. Googleビジネスプロフィール

探す場所 備考
ビジネス説明文 750字あるため紛れ込みやすい
サービス項目 「交通事故治療」で登録しているケースが多い
投稿(過去分も) 削除しない限り残り続ける
口コミ返信 「治療を担当させていただきました」
質問と回答(Q&A) 自分で投稿した回答も対象

4-3. 紙媒体・院内

探す場所 備考
看板・のぼり 「交通事故治療」が定番表記
チラシ 回収不能。刷る前に確認
院内POP・料金表 「治療費」の表記
問診票・同意書 「治療について」の項目名
名刺・封筒 「○○治療院」の院名
⚠️ 問診票・同意書も見直す

患者さんにお渡しする書面は広告ではありませんが、「治療」という語を使い続けていると院内の意識が変わりません
また、立入検査で書類を確認される際に目に留まります。書面も「施術」に統一しておくのが望ましいです。

4-4. 検索して一括で見つける方法

媒体 方法
ホームページ Googleで site:自院ドメイン 治療 と検索
ページ内 ブラウザで Ctrl + F → 「治療」
GBP 管理画面で各項目を目視。投稿は過去分まで遡る
WordPress 管理画面の投稿一覧で「治療」を検索

site: 検索は最も効率的です。自分でも忘れていたページが見つかることがあります

5. 安全な言い換え一覧

媒体別に治療を探す場所を示した図
図5: 媒体別の「治療」の探し方。

「治療」を含む表現を、そのまま差し替えられる形で整理しました。

5-1. 基本の言い換え

❌ NG ✅ 言い換え
治療 施術
治療する 施術を行う
治療を受ける 施術を受ける
治療内容 施術内容
治療の流れ 施術の流れ
治療費 施術料 / 施術費用
治療時間 施術時間
治療計画 施術方針
治療院 接骨院 / 整骨院 / 施術所
治療実績 (削除。実績の訴求は比較優良広告)

5-2. メニュー名の言い換え

❌ NG ✅ 言い換え
電気治療 電気療法(物理療法)
温熱治療 温熱療法(物理療法)
超音波治療 超音波療法
牽引治療 牽引療法
手技治療 手技療法
運動治療 運動療法
📚 「療法」は使える

「治療」は使えませんが、「療法」は柔道整復の法定の施術分類に含まれる語です。
整復法 / 固定法 / 後療法 / 手技療法 / 運動療法 / 物理療法 / 温熱療法 / 電気療法 / 超音波療法 / 冷却法
「治療」を「療法」に変えるだけで解決するケースが多くあります。

5-3. 交通事故関連の言い換え

❌ NG ✅ 言い換え
交通事故治療 交通事故後の打撲・捻挫の施術
むちうち治療 頸椎捻挫(いわゆるむちうち)の施術
事故後の治療に対応 交通事故後の施術に対応
治療期間の目安 施術期間の目安
転院して治療を継続 当院での施術に切り替える

5-4. 医療用語全般の言い換え

❌ NG ✅ 言い換え
診断する 状態を確認する
診察 施術前の確認
検査 患部の状態確認
カルテ 施術録
通院 来院
患者様を診る 施術を担当する
処置する 施術を行う

使えない語の全体一覧は、整骨院で使ってはいけない症状名・療法名一覧に100語まとめています。

6. 院名に「治療院」が入っている場合

治療の基本的な言い換えを示した図
図6: 「治療」の基本的な言い換え一覧。

最も対応が難しいケースです。院名の変更には開設届の変更手続きが必要で、看板・印刷物・ウェブサイトの全面的な変更も伴います。

6-1. リスクの大きさ

状況 リスク
院名に「治療院」が入っている 指摘を受ける可能性はあるが、直ちに罰則ではない
本文中でも「治療」を多用 リスクが高い。院名と併せて実態と判断される
院名のみで、本文は「施術」に統一 リスクは相対的に低い

6-2. 現実的な対応の順序

  1. 本文中の「治療」をすべて「施術」に統一する — 即日〜数日で可能。効果が大きい
  2. 「柔道整復師による施術」を併記する — 実態が伝わるようにする
  3. 所轄保健所に相談する — 名称変更が必要かを確認する
  4. 指導があれば変更手続きを行う — 開設届の変更届を提出
✅ まず本文から直す

院名の変更は手続き・費用・時間がかかります。しかし本文の「治療」を「施術」に置換するだけなら、今日中にできます
そして、リスクを下げる効果はこちらの方が大きいです。院名だけが「治療院」で本文が「施術」に統一されていれば、実態としては適切に運用していると評価されます。

6-3. 名称変更の手続き

項目 内容
提出先 所轄の保健所
提出書類 施術所開設届出事項変更届
期限 変更後10日以内(自治体により異なる)
併せて必要な作業 看板・印刷物・ウェブサイト・GBP・名刺の変更

手続き自体は難しくありませんが、関連する変更作業が大きいのが実情です。計画的に進めてください。

7. 患者さんが「治療」と言うときの対応

メニュー名と交通事故の言い換えを示した図
図7: メニュー名と交通事故関連の言い換え。

「患者さんは普通に『治療』と言うのに、こちらだけ言い換えるのは不自然では」という声はよく聞きます。結論から言うと、不自然にはなりません。

7-1. 対面の会話は広告ではない

場面 広告該当性
対面での1対1の会話 広告に該当しない
電話での問い合わせ対応 広告に該当しない
ホームページ・SNS・チラシ・看板 広告に該当する
口コミへの返信 広告に該当する

つまり、会話の中で「治療」という語が出ること自体は、広告規制の問題ではありません

7-2. ただし言い換える方が望ましい理由

📚 院内の言語が広告に染み出す

日常的に「治療」と言っていると、ホームページやSNSを書くときにも自然に出てきます
スタッフが書いた投稿、受付が返した口コミ返信、新しく作ったPOP——すべてに紛れ込みます。
院内の言葉を「施術」に統一しておくことが、広告違反を防ぐ最も確実な方法です。

7-3. 自然な受け答えの例

✅ 患者さんが「治療してもらえますか?」と言った場合

❌ 不自然な返し
「当院では治療ではなく施術と申しております」(硬すぎる。相手を否定している)

✅ 自然な返し
「はい、まず状態を確認させていただいたうえで、施術の内容をご説明しますね」

相手の言葉を訂正せず、自分の側だけ「施術」を使う。これで十分です。数回のやり取りで、患者さんも自然に「施術」を使うようになります。

7-4. スタッフへの共有

やること 内容
言い換え表を掲示する 本記事第5章を印刷して受付に貼る
書面を統一する 問診票・同意書・説明用紙から「治療」を消す
投稿前の確認項目に入れる SNS・口コミ返信のチェックリストに追加
理由を説明する 「決まりだから」ではなく、法令上の根拠を伝える

最後の点が重要です。理由が分からないルールは守られません。 「柔道整復師法では『施術』という語が使われている」「『治療』は医師が行う医行為を指す」と説明すれば、納得して運用されます。

8. よくある質問FAQ

避けるべき医療用語を示した図
図8: 避けるべき医療用語と言い換え。

Q1. 「交通事故治療」は業界の慣用表現では?

慣用表現であることと、適法であることは別です。業界で広く使われていても、「治療」が医行為を示唆する語であることは変わりません。「交通事故後の打撲・捻挫の施術」と書き換えてください。長くなりますが、対応できる範囲も同時に伝わるので、むしろ正確です。

Q2. 患者さんが「治療」と書いた口コミに、返信で「治療」を使ってもいいですか?

避けてください。口コミ返信は広告に該当します。患者さんの言葉を引用する形でも、施術所側が「治療」と書けば違反表現になります。「施術を担当させていただきました」のように、自分の側の語彙で書いてください。

Q3. 「治療」ではなく「治癒」ならどうですか?

より問題が大きくなります。「治癒」は結果を断定する語であり、効果保証に該当します。「治す」を含む語は全般に避けてください。「完治」「根治」「治る」も同様です。

Q4. 「療法」は使えるのに「治療」がダメなのはなぜですか?

「療法」は柔道整復の法定の施術分類に含まれる語だからです。整復法・固定法・後療法・手技療法・運動療法・物理療法などは、制度上の用語として認められています。一方「治療」は法令上、柔整に関して使われていません。この違いが根拠になります。

Q5. 院内の問診票にも「治療」を使えませんか?

問診票は広告ではないため、直接的な違反にはなりません。ただし「治療」を使い続けると院内の意識が変わらず、広告にも染み出します。また、立入検査で書類を確認される際に目に留まります。書面も「施術」に統一しておくことを推奨します。

Q6. 院名が「○○治療院」です。すぐ変更が必要ですか?

直ちに変更しなければ罰則、ということはありません。ただし指摘を受ける可能性はあります。現実的な順序としては、①本文中の「治療」を「施術」に統一する ②「柔道整復師による施術」を併記する ③所轄保健所に相談する、という流れです。本文の統一だけでもリスクは大きく下がります。

Q7. Googleビジネスプロフィールのサービス項目に「交通事故治療」で登録しています

変更してください。サービス項目は見落とされやすい箇所ですが、公開されている以上は広告に該当します。「交通事故後の打撲・捻挫の施術」に変更するか、施術行為名(手技療法・物理療法など)で登録し直してください。過去の投稿にも同じ語が残っていないか確認が必要です。

Q8. 「治療」を全部直すと文章が不自然になりませんか?

ほとんどの場合、「治療」を「施術」に置換するだけで自然な文章になります。「治療費」→「施術料」、「治療の流れ」→「施術の流れ」のように、機械的な置換で対応できます。不自然になるのは「治療実績」のような、そもそも別の理由(比較優良広告)で使えない表現です。その場合は削除してください。

9. まとめ|「施術」に統一するだけで大半は解決する

治療対応のアクションを示した図
図9: 「治療」対応のアクション。

「治療」は、整骨院の広告で最も多く使われ、最も見落とされる禁止語です。症状名の違反と違い、意識して探さないと気づけません。

しかし対処は簡単です。「治療」を「施術」に置換する。ほとんどのケースはこれだけで解決します。他の違反表現のように、書き換えに頭を使う必要がありません。

本日中にできること

  1. Googleで site:自院ドメイン 治療 を検索:何ページに残っているか把握する
  2. 該当ページで「治療」→「施術」に置換:機械的な作業で完了する
  3. GBPのサービス項目とビジネス説明文を確認:「交通事故治療」で登録していないか

今週中にできること

  1. メニュー名を「療法」に変える:電気治療→電気療法、温熱治療→温熱療法
  2. GBPの過去投稿と口コミ返信を遡る:削除しない限り残り続ける
  3. 看板・のぼり・POPを確認:「交通事故治療」が定番表記になっている

今月中に仕組みにすること

  1. 言い換え表を受付に掲示:本記事第5章を印刷する
  2. 問診票・同意書を「施術」に統一:院内の言葉を揃える
  3. スタッフに理由を説明する:法令上の根拠を伝えると定着する

「治療」は業界に深く定着した語です。だからこそ、意識して探さない限り消えません。今日、site: 検索を1回実行するところから始めてください。おそらく想像より多く見つかります。

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