整骨院・接骨院の経営者、またはこれから開業を考えている方で、以下のいずれかに当てはまる方:
「患者さんに『整体とどう違うの』と聞かれて説明できない」「院名に『整体』を入れているが問題ないのか」「なぜ整体院は自由に広告できるのか」
接骨院・整骨院・整体院・カイロプラクティックは、根拠となる法律も、広告規制の強さも、まったく異なります。しかし業界内でも正確に説明できる人は多くありません。
本記事では、4業態の法的な位置づけを整理し、名称の表記ルール、規制の強さの違い、患者さんへの説明の仕方までを実務目線で解説します。
1. 4業態の違いを1枚で理解する

まず全体像を示します。決定的な違いは「国家資格に基づく施術所かどうか」です。
| 業態 | 資格 | 根拠法 | 広告規制 |
|---|---|---|---|
| 接骨院・整骨院 | 柔道整復師(国家資格) | 柔道整復師法 | 厳格 |
| 鍼灸院・マッサージ院 | はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師(国家資格) | あはき法 | 厳格 |
| 整体院 | 民間資格または無資格 | — | 緩い |
| カイロプラクティック | 民間資格または無資格 ※海外では国家資格の国もある |
— | 緩い |
1-1. なぜ規制の強さが逆転して見えるのか
直感に反しますが、国家資格を持つ施術所の方が広告規制は厳しいのが実情です。
理由は、法律で業務範囲が定められている以上、その範囲を超える広告は利用者の誤認を招くためです。無資格の整体院には規制する法律自体がないため、結果的に自由度が高くなっています。
1-2. 業務範囲の違い
| 業態 | 業務範囲 | 保険の扱い |
|---|---|---|
| 接骨院・整骨院 | 骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の5傷病 | 療養費支給申請が可能 |
| 鍼灸院 | はり・きゅうによる施術 | 医師の同意書があれば療養費対象 |
| マッサージ院 | あん摩・マッサージ・指圧 | 医師の同意書があれば療養費対象 |
| 整体院・カイロ | 医業類似行為(法的な業務範囲の定めなし) | 保険適用なし(全額自費) |
ここが利用者にとって最も分かりやすい違いです。保険が使えるかどうかは、資格の有無に直結しています。
2. 接骨院と整骨院|同じものだが表記に違いがある

最も混同されるのがこの2つです。実態はまったく同じですが、法的な扱いに差があります。
2-1. どちらも柔道整復師の施術所
| 項目 | 接骨院 | 整骨院 |
|---|---|---|
| 施術者 | 柔道整復師 | 柔道整復師 |
| 業務範囲 | 5傷病 | 5傷病 |
| 保険の扱い | 療養費支給申請が可能 | 療養費支給申請が可能 |
| 開設届 | 必要 | 必要 |
制度上の違いは一切ありません。同じものを違う名前で呼んでいるだけです。
2-2. ただし「接骨」は告示で認められた表現
広告の観点では、明確な差があります。
| 表現 | 広告での扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 「ほねつぎ」「接骨」 | 告示で明示的に広告可能 | 厚生省告示第70号 |
| 「整骨」 | 告示には明記なし | — |
そうではありません。施術所の名称として「○○整骨院」と届け出て使うことは可能です。実際に多数の整骨院が存在します。
区別すべきは、「施術所の名称」と「業種を示す広告表現」です。「整骨院」は名称として使えますが、業種を示す語として広告で強調する場合は「ほねつぎ」「接骨」の方が根拠が明確です。
2-3. 実務上の使い分け
| 場面 | 推奨 |
|---|---|
| 施術所の名称 | 届け出た名称をそのまま使う(○○整骨院でも○○接骨院でも可) |
| 看板の業種表示 | 「ほねつぎ」「接骨」を併記すると根拠が明確 |
| 検索されるキーワード | 地域では「整骨院」で検索されることが多い |
実務的には、「ほねつぎ ○○整骨院」のように併記するのが最も安全かつ検索にも対応できます。看板の書き方は、整骨院の看板・のぼり・院内POPで書ける表現/書けない表現で解説しています。
院名や看板に「整体」が入っていませんか?
柔道整復の施術所が「整体」を掲げると、利用者の誤認を招くとして指摘を受ける可能性があります。
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3. 整体院・カイロプラクティック|なぜ規制が緩いのか

「整体院は自由に広告しているのに、なぜうちはダメなのか」という不満は業界で頻繁に聞かれます。構造を理解しておく必要があります。
3-1. 根拠となる法律が存在しない
| 業態 | 資格制度 | 広告を規制する法律 |
|---|---|---|
| 接骨院・整骨院 | 国家資格(柔道整復師) | 柔道整復師法 第24条 |
| 鍼灸院・マッサージ院 | 国家資格(はり師等) | あはき法 第7条 |
| 整体院・カイロ | 国家資格なし | 直接規制する法律なし |
整体院・カイロプラクティックは、そもそも施術所として届出をする制度がありません。したがって、施術所の広告を規制する条文の適用対象外になります。
3-2. ただし完全に自由ではない
| 法令 | 適用される場面 |
|---|---|
| 景品表示法 | 優良誤認・有利誤認。「効果があると誤認させる」表示は対象 |
| 医師法 | 「診断」「治療」など医行為を示唆する表現 |
| あはき法 第12条 | 無資格であん摩・マッサージ・指圧を業として行うことの禁止 |
| 刑法(業務上過失傷害) | 施術により傷害を負わせた場合 |
施術所の広告規制の対象外というだけで、景品表示法や医師法の適用は受けます。
実際、消費者庁が整体・カイロ系の事業者に対して景表法違反で措置命令を出した事例もあります。「規制がない」のではなく「柔整法・あはき法の対象外」というのが正確です。
3-3. 有資格者だからこその制約
整骨院にとって不公平に感じられますが、見方を変えれば国家資格に基づく施術所であることの証明でもあります。
| 整骨院にあって整体院にないもの |
|---|
| 国家資格に基づく施術 |
| 療養費支給申請が可能 |
| 自賠責保険・労災保険の取扱 |
| 開設届による行政の把握 |
| 柔道整復師名簿への登録 |
広告で訴求できない代わりに、制度上の信頼性という優位があるという整理です。この点を患者さんに伝えられるかが差になります。
4. あん摩マッサージ指圧・鍼灸との違い

柔整と同じく国家資格に基づく施術所ですが、業務範囲と根拠法が異なります。
4-1. 制度の比較
| 項目 | 柔道整復 | あはき(鍼灸・マッサージ) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 柔道整復師法 | あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律 |
| 資格 | 柔道整復師 | あん摩マッサージ指圧師 / はり師 / きゅう師(3資格) |
| 業務範囲 | 骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷 | あん摩・マッサージ・指圧 / はり / きゅう |
| 療養費 | 5傷病について支給申請可能 | 医師の同意書が必要 |
| 広告規制 | 第24条 | 第7条 |
4-2. 資格を持たない業務は行えない
柔道整復師の資格だけでは、あん摩・マッサージ・指圧を業として行うことはできません。したがって、広告に「マッサージ」と書くこともできません。
施術内容として類似の手技を行う場合も、「手技療法」という柔整の施術行為名で表記してください。
| ❌ 柔整の施術所で使えない | ✅ 代替 |
|---|---|
| マッサージ | 手技療法 |
| 全身マッサージ60分 | 全身の手技療法60分 |
| 指圧 | 手技療法 |
| 鍼灸 | (はり師・きゅう師の資格がなければ不可) |
4-3. 複数資格を持つ場合
柔道整復師と、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格を併せ持つケースがあります。
| 条件 | 可否 |
|---|---|
| 両方の資格を持ち、それぞれの開設届を出している | 両方の業務を行え、広告も可能 |
| 柔整の届出のみで、マッサージを掲げる | 不可 |
資格を持っているだけでは足りず、施術所としての届出が必要です。柔整のみの届出でマッサージを広告することはできません。
5. 院名に使える名称・使えない名称

施術所の名称は開設届に記載するもので、後から変更するには届出が必要です。開業時に慎重に決めてください。
5-1. 使える名称
| 名称 | 備考 |
|---|---|
| ○○接骨院 | 最も根拠が明確 |
| ○○整骨院 | 広く使われている。名称として問題なし |
| ほねつぎ○○ | 告示で認められた表現 |
| ○○接骨院・○○整骨院(地名+) | 地域名を入れると検索でも有利 |
5-2. 避けるべき名称
| 名称 | 問題 |
|---|---|
| ○○整体院 | 柔整の施術所であることが伝わらず、誤認を招く |
| ○○カイロプラクティック | 同上 |
| ○○治療院 | 「治療」が医療行為を示唆する |
| ○○クリニック | 医療機関と誤認される |
| ○○医院 | 同上 |
| ○○マッサージ院 | あはきの資格・届出がなければ不可 |
「○○治療院」という名称は業界で散見されますが、「治療」は医療行為を示唆する語です。施術所では使用を避けるべき表現とされています。
すでに使用している場合、名称変更には届出が必要なため、まず所轄保健所に相談してください。
5-3. 併記による対応
すでに問題のある名称で開業している場合、すぐに変更するのが難しいケースもあります。
| 状況 | 現実的な対応 |
|---|---|
| 名称に「整体」が入っている | 看板・HPに「柔道整復師による施術」「ほねつぎ」を併記する |
| 名称に「治療院」が入っている | 本文中で「治療」を使わない。所轄保健所に相談 |
| 指摘を受けた | 名称変更の届出手続きを行う |
ただし、併記はあくまで緩和策です。指摘を受けた場合は名称変更が求められる可能性があります。
6. 「整体」を掲げるリスク

集客上、「整体」という語は検索需要が大きいため使いたくなります。しかしリスクは小さくありません。
6-1. 3つのリスク
| # | リスク | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 利用者の誤認 | 柔整の施術所と分からず、保険が使えることも伝わらない |
| 2 | 行政からの指摘 | 施術所の実態と広告内容の不一致として指導対象になりうる |
| 3 | 強みを捨てている | 国家資格・療養費という優位性を自ら放棄している |
整体院との差別化要因は、国家資格に基づく施術であること、療養費が使えることです。
「整体」を掲げると、この2つが伝わりません。整体院と同じ土俵で価格と技術を競うことになり、有資格者としての優位を活かせなくなります。
6-2. 検索需要への対応
「整体」で検索されるのは事実です。しかし整骨院が狙うべきキーワードは別にあります。
| ❌ 狙うべきでない | ✅ 狙うべき |
|---|---|
| ○○市 整体 | ○○市 接骨院 / ○○市 整骨院 |
| ○○市 肩こり | ○○市 捻挫 / ○○駅 打撲 |
| ○○市 骨盤矯正 | ○○市 交通事故 接骨院 |
整骨院を探す人の多くは、負傷してから探し始めます。「捻挫」「交通事故」といった急性外傷のキーワードは、来院意欲が高く、かつ業務範囲内で戦えます。
キーワード設計については、整骨院のホームページ制作ガイドで解説しています。
7. 患者さんに聞かれたときの説明の仕方

受付やスタッフが答えられるよう、説明の型を用意しておくと運用が楽になります。
7-1. 「整体とどう違うのですか?」
「当院は柔道整復師という国家資格を持つ者が施術を行う施術所です。
骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といった負傷について施術を行い、条件を満たす場合は医療保険の療養費支給申請ができます。
整体院は国家資格に基づく施術所ではないため、保険の対象にはなりません。」
ポイントは「国家資格」と「保険」の2点に絞ることです。効果や技術の優劣に踏み込むと、比較優良広告に近づきます。
7-2. 「接骨院と整骨院は違うのですか?」
「同じものです。どちらも柔道整復師が施術を行う施術所で、業務範囲や保険の扱いに違いはありません。
名称の付け方が異なるだけで、制度上の区別はありません。」
7-3. 「肩こりは診てもらえますか?」
最も頻度が高く、最も答えにくい質問です。
「当院で保険が使えるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といった、原因が特定できる負傷に限られます。
慢性的な肩の張りなどについては、自費での手技療法をご案内できますが、保険の対象にはなりません。
まずどのような経緯で症状が出たか、お聞かせいただけますか。」
対面での説明は広告には該当しませんが、「肩こりも治せますよ」といった説明は業務範囲の逸脱を示唆します。
「保険が使えるのは5傷病」「それ以外は自費」という線引きを、スタッフ全員が同じように説明できる状態にしてください。
7-4. 院内資料として用意する
説明の型を紙にまとめ、受付に置いておくと運用が安定します。
| 用意すると良い資料 | 用途 |
|---|---|
| 4業態の違い一覧 | 「整体と違うの?」への回答 |
| 療養費の対象となる5傷病 | 「保険使えますか?」への回答 |
| 自費メニューと料金 | 保険対象外の場合の案内 |
| 説明のスクリプト | スタッフ間で説明を統一する |
8. よくある質問FAQ

Q1. 院名に「整体」が入っています。変更すべきですか?
望ましいですが、すぐに変更する必要があるかは状況によります。名称変更には開設届の変更手続きが必要で、看板・印刷物・ウェブサイトの全面的な変更も伴います。まずは所轄保健所に現状を相談し、指導があれば対応するという順序が現実的です。当面は「柔道整復師による施術」「ほねつぎ」を併記して、実態が伝わるようにしてください。
Q2. 「整骨院」は使えないと聞いたのですが本当ですか?
誤解です。施術所の名称として「整骨院」を使うことに問題はありません。多数の整骨院が存在します。区別すべきは「施術所の名称」と「広告で業種を示す表現」で、後者については「ほねつぎ」「接骨」が告示で明示的に認められている、という関係です。
Q3. 整体院は本当に何を書いてもいいのですか?
いいえ。柔整法・あはき法の対象外というだけで、景品表示法や医師法の適用は受けます。実際に消費者庁が整体・カイロ系事業者に措置命令を出した事例もあります。また、無資格であん摩・マッサージ・指圧を業として行うことはあはき法第12条で禁止されています。
Q4. 柔道整復師の資格でマッサージ店を開けますか?
できません。あん摩マッサージ指圧師の資格と、施術所としての届出が別途必要です。柔道整復師の資格だけでは、マッサージを業として行うことも、広告に掲げることもできません。施術内容が類似していても、「手技療法」という柔整の施術行為名で表記してください。
Q5. カイロプラクティックは海外では国家資格だと聞きました
アメリカやオーストラリアなど、一部の国では国家資格として制度化されています。しかし日本では法的な資格制度が存在しません。海外の資格を持っていても、日本国内では民間資格と同じ扱いになります。したがって、日本の施術所が「カイロプラクティック」を掲げても、国家資格に基づく施術という位置づけにはなりません。
Q6. 「整体」で検索されるので、SEO的に不利では?
短期的にはそうですが、整骨院が狙うべきキーワードは別にあります。「○○市 接骨院」「○○市 捻挫」「○○市 交通事故 接骨院」といった、業務範囲内で戦えるキーワードです。整骨院を探す人の多くは負傷してから探し始めるため、急性外傷のキーワードの方が来院意欲も高くなります。
Q7. 患者さんに「整体もやってますよ」と口頭で説明するのは?
口頭の説明は広告に該当しませんが、実態として業務範囲外の施術を行っていることを示唆するため望ましくありません。自費で類似の手技を行う場合も、「手技療法」という名称で説明してください。スタッフ間で説明を統一しておくことが重要です。
Q8. 開業時、名称はどう決めるのがいいですか?
「地域名 + 接骨院 または 整骨院」が最も無難です。地域名を入れると検索でも有利になります。「治療院」「クリニック」「整体院」は避けてください。開設届に記載した名称は後から変更するのに手続きが必要なので、開業時に慎重に決めることをおすすめします。
9. まとめ|資格の有無が規制の強さを決める

4業態の違いを一言でまとめると、「国家資格に基づく施術所かどうか」に尽きます。そして直感に反しますが、資格があるほど広告規制は厳しくなります。
これを不公平と捉えるか、信頼性の証明と捉えるかで、打ち手が変わります。訴求できないことを嘆くより、「国家資格」「療養費が使える」という制度上の優位を伝える方が、結果的に差別化になります。
本日中に確認すること
- 院名に「整体」「治療院」が入っていないか:入っていれば併記での対応を検討
- 広告に「マッサージ」を使っていないか:「手技療法」に置換
- 「ほねつぎ」「接骨」を活用できているか:告示で認められた貴重な表現
今週中にできること
- 説明スクリプトを作る:「整体とどう違うの」への回答を統一する
- 院内資料を用意する:4業態の違い、5傷病、自費メニュー
- スタッフに共有する:全員が同じ説明をできる状態にする
今月中に検討すること
- 狙うキーワードを見直す:「整体」ではなく「接骨院」「捻挫」「交通事故」
- 名称に問題がある場合、保健所に相談:変更が必要か確認する
- 資格の優位を伝える導線を作る:国家資格・療養費を明示する
整体院が自由に広告できることへの不満は理解できます。しかし、整体院には療養費も自賠責も労災もありません。制度上の優位は明確にこちらにあります。それを伝えることが、規制下での最も有効な差別化です。
「整体」「マッサージ」が広告に残っていませんか?
院名・メニュー名・SNSのプロフィールなど、意外な場所に残っていることがあります。
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